このページの要点
- 預託金は入会金・年会費とは別の区分で示し、目的、額の根拠、管理、報告、返還を同じ書面で説明する。
- 運営資金との区分管理と定期報告を契約書に明記する。口座や信託など区分の方法まで書く。
- 保全は信託契約が望ましいとされる。別法人への委託や分別預金では破綻時に十分戻らない可能性を説明する。
- 預託金から差し引くときは金額と内容の明細を示し、追加預託の時期と条件を契約時に示す。
結論:預託金は「何のために預かるか」「分けて持つ」「見せる」「守る」「返す」の五つで設計する
高齢者支援の契約では、日常生活支援や死後事務にかかる費用の一部を、サービスの提供に先立って利用者から預かることがあります。これを預託金(前払金)と呼びます。令和6年6月に関係省庁が示した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(以下「ガイドライン」)は、預託金について、事業者自身の運転資金との混在を防ぐこと、万が一の経営破綻のときに利用者の被害を小さくすること、という二つの観点から、事業者に取り組みを求めています。
預託金の問題は、金額の大きさよりも「見えにくさ」にあります。預けた本人は、自分のお金がどこにあり、何に使われ、いくら残っているのかを、日常の中で確かめにくい。死後事務のための預託金であれば、使われるのは本人が亡くなった後で、本人にはもう確かめられません。そこで契約書と重要事項説明書に、次の五つを書き分けておく必要があります。
預託金の設計を積み上げる順序(下から上へ)
- 目的を決める何の費用の前払いか(日常生活支援の都度の費用、死後事務の費用など)を、入会金・年会費などの他の費用と分けて書く
- 額の根拠を示す死後事務の内容に照らして額を算定し、算定の考え方を利用者と推定相続人に説明できる形にする
- 分けて持つ事業者自身の運営資金とは明確に区分して管理し、そのことを契約書に明記する
- 定期的に見せる管理の状況を利用者に定期的に報告し、差し引いた金額と内容を明らかにする
- 破綻に備える保全の方法を選び、その方法でどこまで守られ、どこから守られないかを説明する
- 終わりに返す解約・死亡のときの精算と残金の扱いを、事前に書面で示す
返金の計算の細部は契約の変更・解約・返金・終了のページで扱い、このページでは預かっている間の管理に絞ります。
契約全体の中での預託金の位置づけは契約の全体像、通帳そのものを預かる財産管理の場合は日常生活支援と財産管理等委託契約のページで整理しています。
預託金とは何か:前払いされる費用であり、入会金や会費とは別のもの
預託金は、法律上の名前ではなく、実務での呼び方です。内容に着目すると、多くは「委任事務を処理するために必要な費用を、あらかじめ委任者が事業者に渡しておくお金」にあたります。民法は、委任事務を処理するのに費用が必要なときは、委任者は受任者の請求により前払いしなければならないと定めています(民法649条)。預託金の契約上の根拠は、この費用の前払いの考え方で説明がつきます。
そうすると、預託金には、委任の規定に由来する性格が付いてきます。受任者は委任事務を処理するにあたって受け取った金銭を委任者に引き渡す義務を負い(民法646条1項)、委任者に引き渡すべき金額や委任者のために用いるべき金額を自分のために消費したときは、その日以後の利息を支払い、なお損害があれば賠償する責任を負います(民法647条)。また、受任者は委任者の請求があればいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は遅滞なく経過と結果を報告しなければなりません(民法645条)。預託金は事業者の売上ではなく、使い道が決まった他人のお金である、という前提で契約書を組み立てることになります。
高齢者支援の契約で出てくる「お金」の区分
| 区分 | 性質 | 契約書・説明書での書き方 |
|---|---|---|
| 入会金・年会費 | 事業者に支払う対価。サービスの提供や会員としての地位の維持に対するもの | 金額、支払の時期、対象となる期間、返金の有無を、預託金とは別の項目として示す |
| サービス利用の都度払い | 利用の都度発生する費用 | 単価、締め日、請求と支払の方法を示す。都度払いがあることを明確にする |
| 預託金(前払金) | 将来のサービス費用に充てるため、あらかじめ預けるお金。使い道が決まっている | 目的、額と算定の根拠、管理の方法、差し引きの方法、報告の頻度、精算と返還を示す |
| 財産管理用に預かる金銭・通帳 | 本人の財産であり、事業者に帰属しない。日々の支払の代行のために管理を任される | 別の財産管理等委託契約として、管理する範囲、保管方法、記録、報告を定める |
ガイドラインは、費用について「包括的に示すのではなく、入会金や預託金などを区分して示す」ことを求めています。この区分を怠ると、利用者や家族は、支払ったお金の全体が事業者の収入になるものか、将来のために預けただけで返還される可能性があるものか、判別できません。解約や死亡のときに「預けた分は戻るはず」「いえ、会費として消費済みです」という食い違いが生じる場面は、この区分表示の不足から始まることが多いと言えます。
預託金という言葉が契約書の中で複数の意味に使われていないかも点検します。死後事務の費用のための預託金と、日常生活支援のための預託金を同じ「預託金」と呼びつつ、精算のルールが異なる、という書き方は、読む側に誤解を生みます。目的ごとに名前と金額を分けるか、同じ名前で扱うなら、同じルールで精算すると書きます。
額の根拠を示す:算定の考え方を利用者と推定相続人に説明できる形にする
ガイドラインは、死後事務のために預託金を受ける場合について、利用者の死後に預託金の返還の要否やその額をめぐって相続人との間でトラブルが生じるおそれがあることから、死後事務の内容等に照らして的確な預託金額を算定し、これを利用者やその推定相続人に丁寧に説明しておくことが望ましいとしています。別紙のチェックリストにも「預託金の額やその根拠について明らかになっている」という項目があります。
算定の「根拠」とは、金額だけでなく、金額を構成する項目と見積りの前提のことです。死後事務の費用であれば、一般には次のような項目が積み上がります。
預託金の額を構成する項目の例(一般的な例)
- 葬送の費用:本人が希望した葬送の方法(火葬のみ、一般的な葬儀など)に応じた見積り。ガイドラインは、必要な見積りを把握して利用者に説明することが望ましいとしています。
- 納骨・埋蔵・供養の費用:収蔵、埋蔵、永代供養などの手続にかかる費用。散骨や樹木葬を希望する場合は、実施できるかの確認が前提になります。
- 遺品や家財の整理の費用:病室や居室の整理、家財道具や遺品の整理にかかる費用。賃貸借契約の解除や残置物の処理を伴うときは、その費用も別に見込みます。
- 行政手続や各種解約の実費:書類の取得費用、郵送費、交通費など、手続の実費。
- 事務処理の報酬:受任者が死後事務を処理することへの報酬。報酬を別払いとするときは、預託金に含めるかどうかを分けて書きます。
- 予備の額:見積りを超える事態に備える部分。予備の額を預かるのであれば、その名目と、使わなかったときの扱いを書きます。
ガイドラインは、死後事務を履行する際に、受任者の事務負担が過重になったり、推定相続人の利益に過度の影響を及ぼしたりしないよう、費用の上限、対応期間の目安、葬儀等について見積りを取る件数などを事前に設定しておく工夫も考えられるとしています。預託金の額は、この上限や見積り件数の設定と対になっています。たとえば「上限を超える費用が見込まれるときは、受任者は相続人に連絡し、了解を得て進める」という手順を契約に置けば、預託金が足りなくなったときの動きも決まります。
推定相続人への説明は、本人の意思に反しない範囲で行うものです。ガイドラインも、委任事務の範囲を決めるにあたって、利用者の意思に反しない場合には、できる限り推定相続人にも事前の説明を行うことが望ましい、としています。利用者が推定相続人に知らせないことを希望する場合には、死後事務委任に関する事務の執行が困難になる可能性があることを説明しておくことが望ましいとされています。預託金の額や根拠を説明する場面でも同じで、本人が知らせてよいとした範囲で、算定の考え方を渡せるようにしておきます。
死後事務の契約の組み立て全体は死後事務委任契約の書き方、死亡後の実際の動きは死後事務の履行の実務のページで扱っています。
区分管理と定期報告:契約書に何を書くか
ガイドラインは、利用者からの前払金(預託金)について、(1)事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理すること、(2)利用者に定期的に管理状況を報告すること、が望ましいとし、これらを適切に実施する旨を契約書に明記し、利用者とも共有しておくことが望ましいとしています。チェックリストにも「預託金について、事業者自身の運転資金等とは明確に区分して管理している」という項目が入っています。
「明確に区分」とは、頭の中で区別しているだけでは足りず、口座や帳簿の上で区別が分かることをいいます。同じ口座に運営資金と預託金が入り、帳簿だけで区別している状態は、残高の面からは区別が見えません。区分の方法を契約書に書くときは、どのような形で区分するか(別の口座、信託の勘定、別法人での管理など)まで示すほうが、読む側の安心につながります。
書き方の例(一般的な例) 預託金の管理に関する条項
区分管理の書き方
理由「善良な管理者の注意」だけでは、運営資金と混在してよいのかどうかが分かりません。区分の方法と使途の制限まで書くと、守られている状態が確かめやすくなります。
報告の書き方
理由民法645条により、請求があれば報告する義務は法律上もあります。それに加えて、定期的に事業者から見せる仕組みを置くのが、ガイドラインの求める望ましい姿です。
使途の書き方
理由使途が広いと、日常のサービス費用や会費にまで充当されると読まれるおそれがあります。目的ごとに預託金を分けるなら、使途の限定を書きます。
報告の頻度と方法は、利用者の状況に合わせて決めます。報告書を紙で送るのか、画面で見られるようにするのかによって、受け取る側の負担は変わります。利用者が成年後見制度を利用しているときは、成年後見人等にも情報を共有することが重要だとガイドラインは述べています。また、推定相続人の連絡先を聴取している場合は、推定相続人等に報告することが重要だとされています。報告先を契約時に決めておくと、事業者が報告を怠る余地を減らせます。
報告そのものを記録に残すことも欠かせません。ガイドラインは、提供したサービスの時期や内容、要した費用等についてサービス提供記録を作成して保存することを求めています。トラブルが生じたときには、契約上の義務を履行したことについて事業者が主張・立証する立場に立つことがあるため、預託金の入出金の記録と、報告した事実の記録は、同じ場所に保管しておきます。
保全方法の比較:信託・別法人への管理委託・分別預金
区分して管理していても、事業者が経営破綻に陥ったとき、預託金が利用者に戻るかどうかは別の問題です。ガイドラインは、資金決済に関する法律では、送金サービスを提供する資金移動業者が顧客から受け入れた資金を原則として供託、保全契約もしくは信託契約(またはこれらの併用)によって保全することが義務づけられていることを例に挙げ、そのうえで、供託は法律の定めがない限り利用できないこと、一部の事業者では信託契約を利用する慣行が見られることを踏まえ、預託金は信託銀行または信託会社を相手方とする信託契約を利用して保全することが望ましいとしています。
資金決済法の規律は、資金移動業者に向けたものです。ガイドラインは、預託金の保全を考えるための参考として挙げており、預託金の預かりそのものにこの法律の義務が直接かかる、という趣旨ではありません。契約書やホームページに「資金決済法に基づき保全しています」と書くと、読む側に誤解が生じます。どの法律のどの規定に基づく保全なのか、実際の保全の仕組みを正確に書くことが大切です。
ガイドラインが示す預託金の保全方法の比較
| 方法 | 内容 | ガイドラインの位置づけ | 注意する点 |
|---|---|---|---|
| 信託銀行・信託会社との信託契約 | 預託金を信託して管理する。信託会社等を相手方とする契約を結ぶ | 望ましいとされる方法 | 信託を業として営むには内閣総理大臣の免許が必要(信託業法3条)。相手方が、信託業法の免許・登録を受けた信託会社、または金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)の認可を受けた信託銀行等であることを確かめる。費用の負担や、信託財産から払い出す手順も契約書に書く |
| 別法人への管理委託 | 資金管理の知識・経験があり、財産基盤が充実し、士業等の業法に基づく規制に服している別の法人に預託金の管理を委託する | このほかに考えられる方法 | 必ずしも倒産隔離が効かず、事業者や別法人が破綻したときに、利用者が十分な資金の還付を受けられない可能性がある |
| 運転資金と分けた預金 | 事業者自身の運転資金等と分別した預金で管理する | このほかに考えられる方法 | 同じく必ずしも倒産隔離が効かない。口座名義、使途の制限、通帳や残高の確認方法を示す |
| 区分がない状態 | 運営資金と同じ口座で、帳簿だけで区別する | ガイドラインは混在の防止を求めている | 事業者の債権者の差押え等の影響を受けやすい。避ける |
この表で大切なのは、「どの方法を採るか」と同じくらい、「その方法でどこまで守られ、どこから守られないか」を利用者に説明することです。ガイドラインも、別法人への委託や分別預金について、破綻時に利用者が十分な資金の還付を受けられない可能性があることには留意を要する、と明記しています。重要事項説明書に「預託金は分別して管理しています」とだけ書くのではなく、「この方法では、事業者が破綻した場合に預託金の全額が戻らない可能性があります」という留意点まで書くのが、誠実な説明です。
また、この分野の公表資料は、令和5年8月の総務省行政評価局の調査結果報告書をはじめ、利用者保護の観点から事業の課題を指摘してきました。ガイドラインの末尾にある「今後の課題」には、優良な事業者を認定する仕組みの創設等を検討すると書かれています。現時点で認定制度が整備されたとはいえないため、ガイドラインの記載に沿った自主的な取り組みを、契約書とホームページで示しておくことになります。
差し引き明細と追加預託:お金の動きを「見える形」にする
預託金から費用を差し引いて支払う方法は、事業者にとって便利ですが、ガイドラインは「当該利用者にとって費用の詳細が不透明になることが考えられる」と指摘しています。そのうえで、差し引かれた費用の金額と内容について明らかにすることが望ましいとしています。また、利用者とのトラブルを回避する観点から、費用の支払により預託金が不足した場合の追加預託の時期や条件について、事前に示しておくことも考えられるとしています。
書き方の例預託金からの差し引きと追加預託(一般的な例)
- 事業者は、利用者に提供したサービスの費用を、第○条に定める預託金から差し引くことができます。ただし、差し引く場合には、サービスを提供した日、サービスの内容、単価と数量、差し引いた金額を記載した明細を作成し、○か月に一度、利用者に交付します。
- 預託金の残高が、事業者が合理的に見込む今後の費用に対して不足するおそれがあるときは、事業者は、不足が見込まれる時期と金額、およびその根拠を書面で利用者に示し、追加の預託を依頼することができます。
- 利用者は、追加の預託を求められた場合でも、これに応じる義務を負いません。応じないときは、事業者は、預託金の残額の範囲内でサービスを提供するか、第○条に従って契約を終了することができます。
- 事業者は、利用者の同意なく、第○条に定める目的以外の費用に預託金を充当しません。
金額や日数は伏せています。実際には、サービスの性質に合わせて、明細の項目と交付の頻度を決めます。
差し引きの明細は、利用者本人だけでなく、将来の相続人にとっても重要です。死後事務を終えた後、相続人に預託金の使途を説明する場面では、生前の日常生活支援の費用の差し引き履歴が残っていなければ、残金の根拠を示せません。日常のサービス費用の明細と、死後事務の費用のための預託金の明細を、別の記録として残しておくと、後に説明がしやすくなります。
追加預託の条件も、契約時に決めておきます。預託金が不足したときに、何も決まっていないと、事業者が「継続のために追加の預託が必要」と求め、利用者が断りにくい状況に追い込まれるおそれがあります。消費者契約法は、判断力が著しく低下していることから生活の維持に過大な不安を抱いている消費者の不安をあおり、契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難となる旨を告げる勧誘を、取消しの対象としています(同法4条3項7号)。追加預託の依頼の場面でも、この趣旨に反する言い方をしないよう、条件と手順を先に書面で示しておく必要があります。
事業者の責任を制限する条項にも注意します。預託金の管理に関して「事業者は、いかなる場合も責任を負いません」と書くと、債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項として無効とされます(消費者契約法8条1項1号)。故意または重大な過失による場合に責任の一部を免除する条項も無効です(同条1項2号)。預託金を不正に消費したり、区分管理の義務に違反したりして利用者に損害を与えたときは、民法647条による利息と損害賠償の責任が生じうる、という整理で、免責の範囲を設計します。
死亡時・解約時の残金:どこまでを管理の問題として書くか
預託金の最後の局面は、残金の扱いです。このページでは、返金の計算には立ち入らず、預かっている間の管理の問題として、契約書に置くべき最小限の事項を整理します。精算の具体的な計算方法は契約の変更・解約・返金・終了のページが扱います。
ガイドラインは、死後事務について、具体的な支援内容、費用支払のための預託金の取扱い、残金の扱いを、契約書および重要事項説明書に明記したうえで死後事務委任契約を締結することが重要だとしています。死後事務に要した費用は預託金から精算することができ、残金がある場合の扱いは契約で決めておく、という考え方です。利用者の死後は、委任事務が終了した時点で委任者の地位にある相続人に、経過と結果を遅滞なく報告しなければなりません(民法645条)。
確認の問いと理由預託金の最後の局面で、契約書に答えを置いておきたい問い
死後事務に要した費用を差し引いた後の残金は、誰に、いつまでに、どのような方法で返すのか
残金の返還先が決まっていないと、相続人が複数いるときに、誰に渡せば足りるのかが分からなくなります。報告先を特定の相続人に絞る旨の定めとあわせて検討します。
預託金が不足したとき、不足分を誰に請求するのか
請求できる相手は、委任者の地位を承継した相続人であるのが基本です。請求の方法と、請求に応じてもらえないときの対応(辞任など)をあらかじめ示します。
相続人が預託金の使途に疑問を示したとき、どの資料を見せるのか
出納の記録、領収書、業者の見積りなど、示せる資料を決めておくと、説明の準備がしやすくなります。
途中で契約を解約したとき、使われていない預託金はどう戻るのか
返金の時期、方法、差し引ける費用の範囲を、解約の条項とつなげて書きます。
預託金の残金を事業者に贈与する、あるいは寄附とする、という書き方は、別の論点を生じさせます。贈与や寄附の取扱いは死因贈与・寄附・遺贈と契約のページで扱います。
ガイドラインが示す具体例に、預託金の残金を事業者に贈与する契約を併せて締結することが、利用者の意思に基づくものか疑義が残るため避けることが重要、という記載があります。預託金の残金の扱いを決めるときは、返還が原則であることを前提にして、それと異なる扱いを置く場合には、別の項目として、本人の意思が確かめられる方法で定めます。
起きがちなこと:預託金をめぐる場面と備え
預託金をめぐる、時点ごとの場面
契約するとき
起きがちなこと金額の総額だけが示され、入会金と預託金の区別が分からないまま、署名してしまう。預託金が将来返還されるものなのか、消費されるものなのか、説明を受けた記憶があいまいになる。
契約書・説明書での備え費用を入会金、預託金、都度払いに分けた一覧を重要事項説明書に置く。預託金については、目的、額の根拠、管理方法、差し引きの方法、返還を、同じ書面の中で説明する。
利用が続いているとき
起きがちなこと預託金から費用が差し引かれていくが、明細が届かない。残高がいくらなのか、本人も家族も分からなくなる。
契約書・説明書での備え管理状況の定期報告の頻度と方法を契約書に書く。差し引き明細には、日付、内容、単価、数量、金額を入れる。
預託金が足りなくなったとき
起きがちなこと事業者から追加預託を求められ、断ると契約を打ち切られるのではないかと不安になる。
契約書・説明書での備え追加預託の時期と条件、応じない場合にどうなるかを、契約時に書面で示す。不安をあおる言い方を避ける。
事業者の経営に問題が生じたとき
起きがちなこと預託金が戻るのかどうか、利用者にも家族にも分からない。連絡窓口も不明になる。
契約書・説明書での備え保全の方法とその限界を説明し、事業継続計画と清算の方針をあらかじめ定めて公表する。
利用者が亡くなった後
起きがちなこと相続人から、預託金の使途と残金の根拠を問われるが、記録が整っていない。
契約書・説明書での備え出納の記録、領収書、見積りを保存し、民法645条の報告をできる形にしておく。残金の返還先と方法を契約書に書く。
起きがちなこと:預託金で見落とされやすい点
- 預託金と入会金・年会費を一つの金額として提示し、返還されるものがどれなのかを示していない。
- 「分別して管理」と書きながら、口座名義や管理の方法、報告の頻度が何も書かれていない。
- 保全の方法を信託や別法人への委託としながら、その方法で守られない場合があることを説明していない。
- 預託金から費用を差し引くが、差し引いた金額と内容の明細を利用者に交付していない。
- 追加預託の求め方が契約に書かれておらず、不足が生じるたびに個別に交渉している。
- 死後事務のための預託金の残金の返還先が、相続人が複数いる場合を想定せずに書かれている。
預託金の条項を見直すときの確認項目
- 預託金の目的が、日常生活支援のものと死後事務のものとで分かれているか。
- 額の算定の項目と前提を、本人と推定相続人に説明できる形で残しているか。
- 区分管理の方法と、定期報告の頻度と方法が、契約書に書かれているか。
- 保全の方法と、その限界を、重要事項説明書で説明しているか。
- 差し引き明細と追加預託の条件が、契約時に示されているか。
- 残金の返還先と方法、解約時の精算が、契約書に書かれているか。
預託金の管理は、契約書の一か条ではなく、契約書、重要事項説明書、記録、報告の四つがそろって初めて機能します。見直しの際には、条文だけでなく、実際に出す書面と保管する記録まで確かめます。契約がトラブルになったときの確認の順序は契約トラブルとよくある質問のページに整理しています。
よくあるご質問
預託金とは、入会金や年会費とどう違いますか。
入会金や年会費は事業者に支払う対価ですが、預託金は将来のサービス費用に充てるためにあらかじめ預けるお金で、使い道が決まっています。ガイドラインも、入会金や預託金などを区分して示すことを求めています。契約書と重要事項説明書では、それぞれの目的、金額、返還の有無を別の項目として書きます。
預託金は、事業者の運転資金と一緒の口座で管理してもよいのですか。
ガイドラインは、預託金を事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理することが望ましいとしています。同じ口座で帳簿だけ区別する方法は、事業者の経営が悪化したときの影響を受けやすいため、避けるほうが安全です。区分の方法は契約書に明記して、利用者とも共有しておきます。
事業者が破綻したら、預託金は戻りますか。
保全の方法によって違います。ガイドラインは信託銀行や信託会社との信託契約による保全が望ましいとしつつ、別法人への管理委託や分別預金では、必ずしも倒産隔離が効かず、十分な資金の還付を受けられない可能性があると指摘しています。どの方法で守られ、どこから守られないかを、契約前に確かめておくことが大切です。
預託金が足りなくなったとき、追加で預けなければなりませんか。
追加預託に応じる義務があるかどうかは、契約の定めによります。ガイドラインは、預託金が不足した場合の追加預託の時期や条件を事前に示しておくことも考えられるとしています。契約書にその条件が書かれていないとき、あるいは書かれていても利用者の不安をあおって求められたときは、内容を確かめる必要があります。
利用者が亡くなったとき、預託金の残りは誰に返されますか。
契約書で返還先を定めておくのが基本です。死後事務が終了した後は、委任者の地位にある相続人に、経過と結果を報告しなければなりません(民法645条)。相続人が複数いるときに特定の者に報告すれば足りる旨を契約に定める工夫もガイドラインに示されています。返還先と方法は、契約書に書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの内容や契約の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務の経験をもとに、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」は法律ではなく、事業者が自主的に確かめるための指針として示されたものです。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会