日常生活支援と財産管理等委託契約:行為の支援とお金の管理を分ける

買い物の付添いと、通帳の管理は、同じ日常生活支援でも重さが違います。お金に触れるときは契約を分け、記録・保管・報告を足します。型の選び方と条項の組み立てを整理します。

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買い物の立替が積み上がり、いつの間にか通帳を預かる状態になる。契約書が見守りのままだと、お金の根拠がありません。

このページの要点

  • 日常生活支援は、生活支援関係と財産管理関係に分かれる。お金の管理は、財産管理等委託契約を別に結ぶ。
  • 原則は利用者自身が払うのを手伝う形。代行するときは同意を得て、預かった金銭を事業者の運転資金と区分する。
  • 出納記録は利用者ごとに作り、領収書を保存し、都度報告する。求めがあればいつでも報告する義務がある。
  • 個人サポーターに任せるなら、利用者の許諾を得て復委任とし、現金の受領は期日・口座・分別・報告を定める。

結論:行為の支援と、お金の管理は契約を分け、お金の側に記録・保管・報告を足す

買い物への同行や通院の付添いは、利用者のために行為をする支援です。公共料金の支払や、通帳の管理は、利用者のお金に触れる支援です。この二つは、どちらも「日常生活支援」と呼ばれますが、契約としての重さがまるで違います。行為の支援は、やったかやらなかったかを記録すれば足ります。お金の管理は、預かった事実、使い道、残高、報告の一つ一つが、あとで問われます。

ガイドラインは、日常生活支援の中で、利用者の日常的に発生する支払などに関し、事業者が金銭管理等を含めて行う場合には、管理する範囲、保管方法、記録の保存、利用者の確認方法といった具体的な事項を重要事項説明書で丁寧に説明し、契約書に明記したうえで、財産管理等委託契約を締結することが重要であると述べています。つまり、お金に触れるなら、行為の支援の契約に付け足すのではなく、別の契約を結ぶ、という考え方です。

  • 日常生活支援には二つの系統がある。生活支援関係(付添い・買物・手続の補助など)と、財産管理関係(支払の代行・生活費の管理・預貯金の取引など)。後者は、財産管理等委託契約を別に結ぶ。
  • 金銭の支払は、可能な限り、利用者自身が支払うことをサポートする形が望ましい。代行するときは、利用者の同意を得て、預かった金銭を事業者自身の運転資金と明確に区分する。
  • 財産管理等委託契約では、利用者ごとの出納記録、領収書の保存、利用者への都度の報告を行う。求めがあれば、いつでも報告する義務がある(民法645条)。
  • 個人のサポーターに任せるときは、利用者の許諾を得て復委任とする(民法644条の2第1項)。利用者から現金を受け取る場合の振込み・分別管理・報告のルールを契約に置く。
  • 利用者と任意後見契約が結ばれ、効力が生じたときは、財産管理等委託契約は終了する旨を書いておく。権限の重複によるトラブルを避けるため。

このページは、お金の「管理」と「日常の支出」を扱います。前払いで預かる預託金の保全は預託金・前払金の管理、解約したときの返金の計算は契約の変更・解約・返金・終了のページで扱います。どちらも、このページでは立ち入りません。

日常生活支援の二つの系統と、契約の置き方

ガイドラインの表1は、日常生活支援サービスを二つの系統に分けて例示しています。一つは「生活支援関係」で、通院の送迎や付添い、買物への同行や購入物の配達、生活に必要な物品の購入、日用品や家具の処分、入院や入所のための引っ越しと家具類の移動・処分、介護保険等のサービス受給手続の代行です。もう一つは「財産管理関係」で、公共料金等の定期的な支出の支払手続の代行、生活費等の管理と送金、不動産や動産の保存・管理、預貯金の取引、印鑑や重要書類の保管などです。

日常生活支援の二系統:お金の動きと契約の置き方

系統業務の例お金の動き契約の置き方
生活支援関係通院の送迎・付添い、買物の同行や配達、物品の購入、日用品や家具の処分、引っ越し、介護保険等の手続の代行利用料の支払。買物の代金を立て替える、または預かって支払う場面がある利用契約書で業務の範囲と費用を定める。提供した内容と費用の記録を残す
財産管理関係公共料金等の支払手続、生活費の管理・送金、財産の保存・管理、預貯金の取引、印鑑・証書の保管利用者名義の口座や現金を、事業者が扱う財産管理等委託契約を別に結ぶ。管理範囲、保管、記録、報告を書く

表のとおり、生活支援関係でも、買物の代金は動きます。お金が動くたびに財産管理の契約が要るわけではありません。ガイドラインが財産管理等委託契約を想定しているのは、事業者が、日常的に発生する支払などについて、金銭管理等を含めて行う場合です。たとえば、買物の都度、その場で利用者本人が代金を支払い、事業者が付き添うだけなら、お金は事業者の手元を通りません。利用者から代金を預かる、立て替える、通帳から引き出す、といった場面になると、お金の管理の問題になります。

生活支援関係の業務には、行為の記録が必要です。ガイドラインは、日常生活支援サービスには、利用の都度費用が発生するものもあるため、実施したサービスの内容や費用等について記録を残しておくことが重要だとしています。また、通院の送迎・付添いや介護保険等サービスの手続支援を行う場合には、かかりつけ医や担当のケアマネジャー等に日頃から定期的に連絡するなど、連携体制を築いておくことが望ましいとされます。業務の範囲に医療行為が含まれないことは、契約書に明記します。

利用者が希望するサービスによっては、事業者が自ら提供できない場合もあります。その場合、ガイドラインは、他の事業者を紹介するなどの対応も考えられるとしています。利用者が介護保険サービスや障害福祉サービスの利用を希望するときは、関係機関と連携して調整することが望ましいとされます。契約書に、提供できない業務を挙げておくと、紹介や調整の位置づけが明確になります。

確認の問いと理由業務の範囲を決めるときの問い

  1. その業務は、利用者のために行為をするだけか、お金を扱うのか。

    お金を扱うなら、財産管理等委託契約を別に結ぶ必要が出る。行為だけの業務と分けて書く。

  2. 買物の代金は、その場で利用者が払うのか、事業者が立て替えるのか、預かった金銭から払うのか。

    三つはお金の動きも責任も違う。どの型を原則とするかを決め、他の型は例外として手続を定める。

  3. 医療行為や、法律上の資格が必要な行為が、依頼の中に混ざっていないか。

    含まれない旨を契約書に書き、依頼されたときは断るか、他の事業者を紹介する。

  4. 業務の記録は、誰が、どの様式で、いつまで保存するか。

    記録は報告の元になり、事業者が履行を示す資料にもなる。様式と保存期間を決めておく。

立替・預り金・通帳の管理:お金の動きの型

日常生活支援で利用者のお金に触れる場面は、大きく四つの型に分けられます。型によって、民法上の位置づけも、契約書に書くべき事項も異なります。同じ「お金を預かる」でも、買物のために数千円を預かるのと、通帳とカードを預かるのとでは、責任の重さが違います。

お金の動きの四つの型

型内容民法上の位置づけ契約書に書くこと
立替払い事業者が自分の資金で支払い、後で利用者に請求する受任者が事務の処理に必要と認められる費用を支出したときの、費用等の償還請求(民法650条1項)立替の上限、請求の時期と方法、領収書の添付、立替を行わない場面
預り金利用者から一定額を預かり、買物などの支払に使う受任者が事務の処理に当たって受け取った金銭は、委任者に引き渡す(同法646条1項)預かる額の上限、保管方法、精算の時期、残金の返還、レシートの添付
通帳・カードの管理利用者名義の通帳やカードを預かり、引出しや支払をする財産管理等委託契約。銀行ごとの代理人の手続が必要な場合がある管理する範囲と限度、暗証番号の扱い、出納記録、報告、禁止事項
前払いの預託金サービスの費用を事前に預かるガイドラインが別に整理する(金銭等を預かる際の対応の(1))預託金の保全と報告は預託金・前払金の管理で扱う

ガイドラインは、金銭的な支払が生じる場合は、可能な限り、利用者自らの支払をサポートする形での支援を行うことが望ましいとしています。利用者の同意を得たうえで支払を代行するときは、利用者から預かった金銭等を、事業者自身の運転資金等と明確に区分しておくことが望ましいとされています。つまり、原則は「利用者が自分で払う。事業者はそれを手伝う」で、代行は例外の位置づけです。契約書の組み立ても、この順序に合わせます。

この原則が意味を持つのは、お金に触れる機会が増えるほど、事業者の責任が増え、不正の疑いが生じる余地も増えるからです。実際に、立替を繰り返すうちに、事業者と利用者のどちらがいくら負担しているのか分からなくなる、という混乱が起きがちです。型を決めておけば、この混乱は避けられます。たとえば、「日常の少額の買物は、利用者が自分で支払う。やむを得ず立て替える場合は、一件ごとに利用者の同意を得て、領収書を添えて請求する。通帳やカードは預からない」と決める事業者もあります。

財産管理等委託契約の条項の組み立て

通帳の管理や支払の代行を行うときは、財産管理等委託契約を別に結びます。ガイドラインは、銀行との間で代理人指名の手続を行ったうえで、利用者名義の通帳の管理や、日常生活において使用する物品・サービスの購入またはその料金支払の代行をすることがありうるとしています。その場合の留意点は、利用者ごとの出納記録の作成、領収書等の保存、利用者への都度の報告です。報告は、利用者から求められたときには、しなければなりません。

条項は、管理の範囲を狭く具体的に書くことから始めます。「財産の管理一切」のような包括的な書き方は、事業者の権限が広すぎ、不正の疑いを招きやすいからです。次に、通帳やカードの保管方法、出納の記録、報告、利用者の確認の方法、禁止事項、費用と報酬、契約の終了を順に置きます。報酬は、特約がなければ請求できないため(民法648条1項)、報酬の有無と額を書きます。

書き方の例財産管理等委託契約の骨子

  1. 利用者は、事業者に対し、別表に記載した預貯金口座(以下「管理口座」という。)に関する次の事務を委託する。ア 公共料金その他定期的に生ずる支払、イ 生活費の引出しと利用者への交付、ウ その他別表に定める事務。事業者は、不動産の処分、金融商品の取引その他別表に定めない事務を行わない。
  2. 事業者は、管理口座の通帳、印鑑、キャッシュカードその他の預かり物を、施錠した場所に保管し、事業者自身の財産と区分して管理する。利用者の暗証番号を、事業者の他の業務と共用しない。
  3. 事業者は、利用者ごとに出納の記録(日付、金額、使途、支払先、残高)を作成し、領収書その他の支払の根拠とともに、契約が終了した後も○年間、保存する。
  4. 事業者は、支払又は引出しを行ったときは、その都度、利用者に報告する。利用者から求めがあったときは、いつでも事務の処理の状況を報告する。
  5. 事業者は、前二項の記録と報告に基づき、毎月○日までに、前月分の出納の状況を利用者に書面で報告する。利用者が成年後見人等を有するときは、成年後見人等にも同じ内容を報告する。
  6. 事業者は、預かった金銭を、自己又は第三者の債務の弁済、貸付け、担保の提供その他委託された事務以外の用途に充ててはならない。
  7. 利用者は、事業者に対し、いつでも通帳、印鑑及び出納の記録の確認を求めることができる。事業者は、これに応じる。
  8. 本契約の終了の事由と、終了したときの預かり物の引渡し及び報告は、別に定める。

別表に管理口座と事務の範囲を書きます。期間や金額は、契約ごとに定めるため「○」で示しています。第5項の報告の頻度は、管理する金額や出入りの多さに応じて決めます。

書き方の例(一般的な例) 条項の書き方の対比

管理の範囲

よくある書き方「利用者は、事業者に、利用者の財産の管理に関する一切の事務を委託する」
整えた書き方管理する口座を別表で特定し、委託する事務を、公共料金の支払、生活費の引出しと交付など、列挙する。列挙しない事務は行わない旨を書く。

理由範囲が広いと、権限の濫用が疑われたときに、どこまでが委託された事務なのか判断できなくなるため。

出納の記録

よくある書き方「事業者は、金銭の出入りについて、適切に記録を作成する」
整えた書き方利用者ごとに、日付・金額・使途・支払先・残高を記録し、領収書とともに契約終了後も○年間保存する、と書く。

理由「適切に」では、何をいつまで残すのかが分からない。具体的に書くほど、事業者が履行を示しやすい。

利用者の確認

よくある書き方記載なし、または「事業者は、利用者から求められたときは報告する」
整えた書き方定期の書面報告に加え、利用者が通帳と記録を確認できる旨と、確認の方法(訪問時に見る、写しを渡すなど)を書く。

理由民法645条は請求があるときの報告を定めるが、利用者が自分から請求できない状況もある。定期報告を契約で補う。

使途の制限

よくある書き方記載なし。
整えた書き方自己又は第三者の債務の弁済、貸付け、担保提供などを禁止する。事業者の役員・従業員が利用者の金銭を借りることも禁止する。

理由利用者の金銭の流用を防ぐ。禁止の明記は、事業者の内部統制の基準にもなる。

銀行での手続にも触れておきます。ガイドラインは、銀行との間で代理人指名の手続を行うことを前提としています。金融機関によって、親族以外の代理人を認めるか、認めるならどのような書類が必要か、取扱いが分かれます。ガイドラインの参考では、関係省庁が、終身サポート事業者が代理人として手続できるよう、金融機関に対して適切な対応を促していくことが書かれています。契約書では、金融機関の手続が金融機関の定めによること、手続がとれないときは、事業者が通帳を預かる形にはせず、利用者自身の手続を支援する形にとどめること、を書いておくと、現実に合います。

記録と報告:何を、いつ、誰に

財産管理の契約で、記録と報告は条項の中心です。ガイドラインは、サービスの提供の管理の項目で、契約が委任または準委任と整理されうること、受任者は、委任者の請求に応じて処理の状況を報告する義務と、委任終了後に経過と結果を報告する義務を負うこと(民法645条)を述べています。さらに、法的トラブルが生じて、事業者が契約上の義務を履行したか否かが争われる場合に、履行についての主張・立証責任を事業者が負うことがある、と指摘しています。

この指摘は、財産管理で特に重みを持ちます。通帳から引き出した金額の使い道について、「使途を示せない」状態は、それ自体が問題とされやすいからです。事業者が使途を示せる記録を持つことは、利用者を守ることであり、事業者自身を守ることでもあります。

記録・報告の対象と方法

対象記録すること報告の方法と時期
個々の支払・引出し日付、金額、使途、支払先、残高、領収書の有無、担当者支払の都度、利用者に口頭または書面で伝える。報告の日時も記録する
月次の出納一か月の収入、支出、残高、通帳の残高との照合毎月、書面で利用者に報告する。成年後見人等がいるときは共有する
預かり物通帳、印鑑、カードの預かりの日時、保管場所、持出しの記録預かったとき、返却したとき、持ち出したときに記録する。定期の面談で利用者に確認してもらう
利用者の希望の変更管理の範囲や、報告の方法についての利用者の希望定期の面談で確認し、変更があれば契約書の別表を更新する

ガイドラインは、定期的に利用者と面談して、利用者の希望や、必要とするサービスに変化がないかを確認することが望ましいとしています。財産管理では、面談の機会に、通帳と出納記録を利用者に見てもらうのが有効です。利用者が通帳や記録を確認できる形にしておけば、事業者が説明するまでもなく、疑問点が出たときにその場で解消できます。

利用者が成年後見制度を利用しているときは、サービス提供記録を成年後見人等にも共有することが重要だとされています。また、利用者の判断能力が低下してきた場合、利用者本人への報告だけでは足りなくなります。誰に報告するのかを、契約書にあらかじめ書いておくことが必要です(判断能力が低下したとき)。

確認の問いと理由記録・報告の仕組みを確かめる問い

  1. 出納記録は、利用者ごとに作っているか。事業者の他のお金の帳簿と分かれているか。

    帳簿が混ざると、使途を示せず、流用の疑いを払えない。

  2. 領収書をもらえない支払はどう記録するか。

    領収書が出ない支払(少額の現金払い、自動販売機など)は、メモと支払時の写真などで記録する決まりを置く。

  3. 報告は、利用者本人が理解できる形か。

    細かい数字を並べた報告だけでは、報告したとは言いにくい。利用者の理解に合わせた書き方を決める。

  4. 報告を受ける人が、本人以外にもいるか。

    判断能力が低下したときや、成年後見人等が選任されたときの報告先を、あらかじめ決める。

  5. 記録の保存期間は、契約の終了後も続くか。

    契約の終了後に、相続人や利用者の家族から報告を求められることがある。

個人のサポーターに任せるとき:復委任と現金の受領

日常生活支援を、事業者が個人のサポーター(支援者)に任せて行う形は、広く見られます。この場合、利用者と契約するのは事業者で、サポーターは事業者の依頼で現場に出向く立場です。民法の整理では、事業者が利用者から受任した事務を、サポーターに復委任する構造になります。受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任できません(民法644条の2第1項)。ガイドラインも、利用者の許諾を得て他の事業者等との間で復委任契約を締結することにより(同条第1項)、保険外サービスを担う事業者やヘルパー等が担う形がありうるとしています。

したがって、利用者との契約書には、事業者が業務を、事業者の登録した支援者に行わせることがあること、その場合も事業者が責任を負うことを書き、利用者の許諾を得ます。許諾の記載がなければ、サポーターの起用そのものが、利用者との関係で問題になります。

サポーターとの契約書では、金銭の取扱いが重要な論点になります。多くの契約書で見られる傾向として、論点は次の五つに集まります。第一に、サポーターが利用者から直接、金銭を受け取ることを禁止するのか、認めるのか。第二に、認める場合に、受け取った金銭を、いつまでに、どの口座に、どう振り込むのか。第三に、受け取った金銭を自分の資金と分けて管理する義務。第四に、受領額と日付の記録と、事業者への報告。第五に、振込みの遅れや不履行があったときの措置です。

書き方の例(一般的な例) サポーターが利用者から現金を受け取る場合の書き方

受領の可否

よくある書き方一つの契約書の中に、金銭の受領を禁止する条項と、受領した場合の処理を定める条項が、別々に置かれている。
整えた書き方受領を原則として禁止し、やむを得ない事情があるときに限って受け取れるとして、その要件・手続・記録を一つの条項にまとめる。

理由禁止と許可が別々に書かれていると、どちらが優先するのか読み取れず、受領の権限があったのかが争いになる。

振込み

よくある書き方「受領した金銭は、すみやかに事業者に引き渡す」
整えた書き方「受領した日から○営業日以内に、事業者が指定する口座に振り込む。振込みの明細を事業者に報告する」

理由「すみやかに」では、遅れたときの判断ができない。期日と口座を特定する。

分別と報告

よくある書き方記載なし。
整えた書き方受領した金銭を、自己の資金と分けて保管する。受領した日時、金額、利用者の氏名、使途を、事業者の指定する様式で報告する。

理由混ぜて使うと、流用の疑いを払えず、利用者の被害も回復しにくい。

遅延・不履行

よくある書き方記載なし。
整えた書き方振込みの遅れや不履行があるときは、事業者は催告のうえ契約を解除でき、遅れた期間の遅延損害金の請求ができる旨を書く。報酬との相殺の可否も明らかにする。

理由不履行の効果を契約で決めておけば、事業者が利用者に対する責任を果たす手がかりになる。

契約の相手方と、お金を渡す相手が別の人になる点にも注意が要ります。利用者から見ると、契約の相手は事業者なのに、現場でお金を渡す相手は個人のサポーターです。この関係を利用者に分かるように、契約書と説明書に書きます。領収書は事業者の名義で発行し、利用者の支払は、可能な限り事業者の口座への振込みにして、現金のやりとりを減らす、というのが穏当な運用です。サポーターが利用者と直接契約を結んでしまう(事業者を介さなくなる)ことを防ぐ条項や、再委託を禁止する条項も、サポーター契約の定番です。

契約の同意を画面やフォームで取る場合にも触れておきます。民法522条2項は、契約の成立に書面等の方式を要しないとしていますから、画面上の同意でも契約は成立します。問題は、同意した人が本人かどうか、同意の内容が改ざんされていないか、操作の記録が保存されているか、という証拠の面です。サポーターが利用者の代わりに入力した場合は、本人の同意と言いがたいため、代理であることを記録します。なお、サポーターと事業者の関係を雇用とみるか業務委託とみるかは、別の分野の問題になるため、このページでは扱いません。

任意後見・成年後見との接続

財産管理等委託契約は、利用者の判断能力があるうちに結ぶ契約です。判断能力が低下すると、利用者が事業者の管理をチェックすることが難しくなります。そのとき、成年後見制度がどう接続するかを、契約の中で決めておきます。

ガイドラインは、利用者が任意後見を希望する場合の書き方として、利用者と事業者の間で任意後見契約が結ばれているときは、判断能力が不十分になったときに、速やかに任意後見監督人の選任を請求すること、他の者との間で任意後見契約を結んでいるときは、任意後見受任者に判断能力が不十分となったことを伝えること、そして、事業者が利用者と財産管理等委託契約を結んでいるときは、任意後見契約が発効した際には、その財産管理等委託契約が終了することを、挙げています。終了させる理由は、任意後見人との権限の重複によるトラブルを避けるためです。

接続に関わる主な条文

  • 任意後見契約に関する法律 2条1号
    任意後見契約

    任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのある委任契約。代理権を付与する。

  • 任意後見契約に関する法律 4条1項
    任意後見監督人の選任

    契約が登記され、本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者の請求により、家庭裁判所が選任する。

  • 民法 859条1項
    後見人の財産管理

    後見人は、被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。

  • ガイドライン 第3・5
    判断能力が低下した場合

    財産管理等委託契約を結んでいるときは、任意後見契約の発効後に終了する旨を契約に明記する。成年後見人等が選任された後は、契約内容を後見人とよく相談する。

成年後見人等が選任されると、財産に関する法律行為は後見人が代表します(民法859条1項)。ガイドラインは、成年後見人の選任によって直ちに本人と事業者との契約に影響が出るものではないとしつつ、契約が長期にわたり、死後事務を含むことに鑑み、成年後見人が選任された後は、契約内容について成年後見人とよく相談することが望ましいとしています。財産管理等委託契約の事業者は、この段階で、通帳や印鑑を後見人に引き渡す準備をする必要があります。

書き方の例財産管理等委託契約の終了に関する定め

  1. 本契約は、次の各号のいずれかに該当したときは、終了する。ア 利用者が死亡したとき。イ 利用者について任意後見契約の効力が生じたとき。ウ 利用者又は事業者が、本契約を解除したとき。
  2. 前項ウの解除は、○日前までに相手方に書面で通知して行う。ただし、利用者について後見開始、保佐開始又は補助開始の審判があったときは、事業者は、成年後見人等と協議のうえ、解除の可否を決める。
  3. 本契約が終了したときは、事業者は、遅滞なく、預かっていた通帳、印鑑、カードその他の物と、出納の記録及び領収書を、利用者、利用者の成年後見人等又は相続人に引き渡し、事務の経過と結果を報告する。

終了の事由に「任意後見契約の効力が生じたとき」を入れるのが、ガイドラインの考え方に沿った書き方です。第2項の協議は、後見開始の審判のみを理由に事業者が一方的に解除できるとは書かない配慮です(消費者契約法8条の3の趣旨)。

判断能力が下がる前の段階にも準備があります。ガイドラインは、定期的な面談で、利用者の状態と成年後見制度の利用についての希望を確かめることを求めています。財産管理を受託している事業者は、通帳の動きや、支払の滞り、同じ買物の繰り返しなどから、判断能力の変化に気づく立場にあります。気づいたことを記録し、契約で決めた手順(家族への連絡、任意後見監督人の選任請求の働きかけなど)に進む流れを、あらかじめ決めておきます。制度の詳しい手順や、事業者が任意後見人になる場合の利益相反は、判断能力が低下したときで整理しています。

起きがちなこと:生活支援とお金の管理でつまずく場面

場面別:起きがちなことと、契約書・説明書での備え

立替が積み上がる

起きがちなこと買物のたびの立替が続き、請求の時期が決まっていないまま、立替額が積み上がった。利用者と家族で金額の認識が食い違う。

契約書・説明書での備え立替の上限、請求の時期、領収書の添付を決める。上限を超えるときは、その都度、利用者の同意を得る。

通帳を預かっていた

起きがちなこと暗証番号も教えられ、事業者が口座から支払を行っていたが、財産管理等委託契約がなく、使途の記録も不十分だった。

契約書・説明書での備え通帳やカードを預かる前に、財産管理等委託契約を結び、出納記録と報告の仕組みを整える。

サポーターが現金を受け取った

起きがちなことサポーターが利用者から現金で報酬を受け取り、事業者への振込みが遅れた。利用者は、事業者に支払ったつもりでいた。

契約書・説明書での備え受領の要件と手続、振込みの期日と口座、記録と報告を、契約書にまとめて書く。利用者の支払は、事業者の口座への振込みを原則にする。

家族が使途を尋ねた

起きがちなこと利用者の家族が、通帳からの引出しの使い道を尋ねたが、事業者は記録を示せなかった。

契約書・説明書での備え出納記録を利用者ごとに作り、領収書とともに保存する。家族への開示の範囲は、利用者の同意で決めておく。

任意後見が始まった

起きがちなこと任意後見監督人が選任されたが、事業者が通帳の管理を続けたため、任意後見人と権限が重なった。

契約書・説明書での備え財産管理等委託契約を、任意後見契約の効力発生で終了させ、預かり物の引渡しと報告の手順を書いておく。

その他、起きがちなこと

  • 生活支援の利用契約書に「金銭の管理を含む」と書き足しただけで、管理の範囲・保管・記録・報告が決まっていない。財産管理等委託契約を別に結ぶ。
  • 記録の様式が担当者ごとに違い、事業者として利用者ごとの出納を追えない。様式を統一し、保存期間を定める。
  • 報告が利用者本人にだけ向けられ、判断能力が下がった後の報告先が決まっていない。報告先の追加の手順を契約書に書く。
  • 医療行為が含まれない旨を書いていないため、利用者から服薬の管理や身体介護を頼まれ、断りにくくなる。他の事業者の紹介や、ケアマネジャーとの調整の位置づけを書く(契約の全体像)。
  • 契約の終了後に、預かっていた通帳や印鑑の返却と、経過の報告が行われないまま時間が過ぎる。終了時の引渡しと報告の手順を書いておく。困ったときの確認の順序は契約トラブルとよくある質問で整理している。

よくあるご質問

利用者の通帳とキャッシュカードを、預かってもよいですか。

預かること自体は、財産管理等委託契約を結び、管理の範囲・保管方法・出納の記録・報告を整えれば、ありうる形です。ただし、ガイドラインは、金銭的な支払が生じる場合は、可能な限り利用者自らの支払をサポートする形での支援が望ましいとしています。通帳やカードを預かる前に、預からずに済む方法がないかを検討し、預かるなら、利用者の同意を得たうえで、事業者自身の運転資金と明確に区分します。銀行ごとに代理人の手続の取扱いが異なる点も、事前に確認します。

買物の代金は、立替と預り金のどちらにすべきですか。

どちらが正しいというより、契約で原則を決めておくことが大切です。立替は、事業者が後から請求する形で、費用の償還請求(民法650条1項)が根拠になります。預り金は、利用者から預かった金銭の使途と残金を精算する形で、受取物の引渡し(同法646条1項)が根拠になります。少額なら、利用者がその場で払う形を原則にするのが、記録の面でも簡単です。立替や預り金にする場合は、上限、精算の時期、領収書の添付を決めます。

領収書や出納記録は、いつまで保存すればよいですか。

法令上の保存期間とは別に、契約書で定めるものです。ガイドラインは、記録の作成と保存を求めていますが、期間は示していません。契約の終了後に、相続人や家族、成年後見人等から報告を求められることがあるため、契約が終わった後も一定の期間(契約書では「○年」のように定めます)保存する、と書くのが実務的です。期間を決めたら、その間は廃棄しない運用を整えます。

サポーターが利用者から、現金を直接受け取ってもよいですか。

契約で決めておく事項です。受領を禁止する立場と、やむを得ない場合に限って認める立場があります。認めるなら、要件と手続、事業者への振込みの期日と口座、自己の資金との分別、記録と報告、遅れや不履行があったときの措置を、一つの条項にまとめます。利用者が事業者に支払ったつもりで個人に渡す形になるため、領収書は事業者の名義で出し、利用者の支払は事業者の口座への振込みを原則にするのが穏当です。

任意後見が始まったら、財産管理等委託契約はどうなりますか。

ガイドラインは、任意後見契約が発効した際には財産管理等委託契約が終了することを、重要事項説明書で説明し、契約書に明記するよう求めています。任意後見人との権限の重複によるトラブルを避けるためです。終了の事由に任意後見契約の効力発生を入れ、預かり物の引渡しと事務の報告の手順も書いておきます。成年後見人等が選任された場合は、契約内容を後見人とよく相談することが望ましいとされています。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの内容や契約の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務の経験をもとに、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」は法律ではなく、事業者が自主的に確かめるための指針として示されたものです。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会

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