このページの要点
- 国の表の六つの引受け(入院の際の連帯保証、入所の際の連帯保証、手続の代行、身柄の引取り、医療に係る意思決定への関与、緊急連絡先)を分け、引き受けないものも書く。
- 連帯保証は書面でしなければ効力を生じない(民法446条)。事業者が払った分の求償と、預託金のどの区分から差し引くかを先に決める。
- 保証人が個人の場合の根保証は、極度額を定めなければ効力を生じない(民法465条の2)。保証人が個人か法人かを確認する。
- 「保証人がいないと入院できない」という断定は、事実と異なる説明や不安をあおる勧誘になり得る(医師法19条1項、消費者契約法4条)。
結論:身元保証は一つの約束ではなく、六つの引受けの束。項目ごとに「引き受ける」「引き受けない」を書く
高齢の方が入院や施設への入所をするとき、病院や施設から「身元保証人」を求められることがあります。民間の事業者がこれを引き受けるサービスは、国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月、内閣官房ほか関係省庁。以下「国のガイドライン」)で「身元保証等サービス」と呼ばれ、次の六つが例として挙げられています。
- 医療施設への入院の際の連帯保証
- 介護施設等への入所の際の連帯保証
- 入院・入所、退院・退所時の手続の代行
- 死亡又は退去時の身柄の引取り
- 医療に係る意思決定の支援への関与
- 緊急連絡先の指定の受託及び緊急時の対応
「身元保証」と一言で言っても、金銭の保証をするのか、手続を手伝うのか、亡くなったときに身体を引き取るのか、夜中の電話に出るのかで、事業者が負う責任は大きく違います。利用者は「身元保証を頼んだのだから全部やってくれる」と受け取りがちで、事業者は「連帯保証と緊急連絡先だけ」のつもりでいる、という食い違いが、契約の途中や亡くなった後に表に出ます。
このため、契約書と重要事項説明書では、六つを分けて、それぞれを引き受けるのか、引き受けないのか、引き受けるなら範囲と費用はどうかを書くのが基本です。国のガイドラインも、具体的な支援内容と費用は、重要事項説明書で丁寧に説明したうえで、契約書に明記して契約することが重要としています。医療に関する同意は、そもそも事業者には権限がないとされており、その整理は医療の同意・緊急連絡先・入院時の関わり方で扱います。契約全体の書類の組み方は契約の全体像、国のガイドライン自体の読み方は高齢者等終身サポート事業者ガイドラインの読み方に書いています。
このページは、六つの分け方、連帯保証の書き方(書面、求償、預託金の充当、極度額)、手続支援と身柄の引取り、「保証人がいないと入れない」という場面の説明、契約書への落とし込みの順に述べます。条文は、民法、医師法、消費者契約法を e-Gov 法令検索で確認した現行の規定に基づいています。
「身元保証」という言葉の意味:慣習的な呼び方で、雇用の身元保証の法律とは別
入院や入所のときに使われる「身元保証」「身元引受」は、法律に定義のある言葉ではありません。厚生労働省が公表している「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」は、医療機関が「身元保証・身元引受等」に求める役割として、緊急の連絡先、入院計画書の説明の受け手、入院中に必要な物品の準備、入院費等の支払い、退院支援、死亡時の遺体・遺品の引取りや葬儀、の六つを整理しています。そして、この資料で使う「身元保証」は、「身元保証ニ関スル法律」に規定される雇用契約上の身元保証ではなく、医療機関で慣習的に用いられているものを指す、と断っています。
この区別は実際に意味があります。「身元保証ニ関スル法律」は、被用者の行為によって使用者が受けた損害を賠償することを約する契約について、期間を定めなかったときは成立の日から三年間(商工業見習者は五年)効力を有する、と定め(1条)、期間は五年を超えられない(2条)としています。これは雇用の身元保証の規律です。高齢者の入院・入所の身元保証にこの期間の上限が当てはまるわけではなく、逆に、雇用の身元保証の感覚で「三年で切れるはず」と考えて契約書を作ると、実際の保証の範囲と期間の設計を誤ります。高齢者向けの契約では、民法の保証の規定と、消費者契約法の規定(利用者が個人の場合)が中心になります。
国の表にある六つの引受けを、契約書でどう分けるか(入院・入所の連帯保証は一行にまとめています)
| 国の表の項目 | 頼まれやすいこと | 契約書で決めること | 引き受けないときの書き方 |
|---|---|---|---|
| 連帯保証(入院の際・入所の際の二つ) | 入院費や施設の利用料の未払いを保証してほしいと求められる | 保証する債務の範囲、期間、上限、事業者が負担した場合の求償と預託金の充当 | 「連帯保証は引き受けない。手続の支援のみを行う」と明記する |
| 手続の代行 | 入院・入所の説明への立会い、書類の作成と提出、費用の支払の代行 | 代行する手続の一覧、利用者の意思の確認の方法、費用の負担 | 本人が自分でできる手続は本人が行うことを原則とし、代行の範囲を限る |
| 身柄の引取り | 亡くなったときの遺体の引取り、退去するときの本人の引取り | 引取りの対象(遺体・本人・遺品)、連絡を受けてから動くまでの目安、引取り後の行き先の手配 | 遺体の引取りは死後事務の契約によると書き、生前の契約には含めない |
| 医療に係る意思決定の支援 | 手術などの同意書への署名を求められる | 同意の権限はないこと、事前の意向の書面の預かり、説明の場への同席 | 「医療行為への同意は行わない」と明記する |
| 緊急連絡先の受託 | 病院や施設の連絡先欄に事業者の名前を書く | 対応の時間帯、駆けつけの目安、かかる費用、連絡先を関係者に伝える方法 | 夜間・休日に対応できない場合は、その旨と代替の連絡先を書く |
表の右端の「引き受けないときの書き方」が大切です。事業者が提供できないことを、契約書にも説明書にも書かずにいると、利用者や医療機関は「頼めばやってくれる」と受け取り、いざというときに断ることになります。国のガイドラインも、利用者に必要でも事業者が対応できない事項は、医療機関や関係機関とも相談して、代替サービスの手配などを調整することが望ましいとしています。
連帯保証をするとき:書面、「連帯」の意味、求償と預託金の充当
事業者が入院や入所の連帯保証を引き受ける場合、民法の保証の規定が働きます。押さえておく点は四つです。
連帯保証の基本(民法)
- 民法 446条保証は書面で
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(1項)。保証契約は、書面でしなければ効力を生じません(2項)。電磁的記録(電子的な契約書)でも書面とみなされます(3項)。口頭の「大丈夫、うちが保証します」では保証は成立しません。
- 民法 454条連帯保証の特則
保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、保証人は、先に主たる債務者に請求するよう求める権利(催告の抗弁、452条)や、主たる債務者の財産から先に執行するよう求める権利(検索の抗弁、453条)を持ちません。病院や施設は、利用者に請求せずに、いきなり保証人に請求できます。
- 民法 459条求償権
主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人が、主たる債務者に代わって弁済をしたときは、そのために支出した財産の額の求償権を持ちます。事業者が病院に立て替えて払った分は、利用者に請求できる関係になります。
- 民法 458条の2情報の提供
委託を受けた保証人が請求したときは、債権者は、主たる債務の不履行の有無や残額、弁済期が到来している額に関する情報を、遅滞なく提供しなければなりません。保証人になる事業者は、病院や施設に未払いの状況を確認する権利を持ちます。
条文は e-Gov 法令検索で確認しています。
国のガイドラインは、連帯保証(身元保証)の契約をする場合に、事業者が保証人として未払費用を負担した場合の契約者への求償や、前払の預託金からの充当のルールを明示することが重要としています。ここで契約書に置くべきなのは、次の事項です。
- 求償の手順:病院や施設から請求を受けたら、いつまでに、どの方法で利用者(または推定相続人)に知らせるのか。事業者が立て替える前に利用者の意思を確かめられる場合は、その確認の手順。
- 預託金からの充当:預託金で足りるときに、どの順序で、どの預託金(死後事務の費用と、生前の支払の費用を分けているか)から充当するのか。充当した金額と内容を利用者に明細で示すこと。
- 不足したとき:預託金で足りないときの追加預託の時期と条件、分割して支払う場合の条件、支払えないときに事業者が取り得る措置。
- 情報の取得への同意:保証人としての事業者が病院や施設から未払いの状況を聞くことは、利用者の個人データを受け取ることにもなるので、あらかじめ本人の同意を書面で得ておく。
預託金の区分管理や報告の頻度は預託金・前払金の管理で扱います。ここでは、「保証人として払ったとき、預託金からどう差し引くのか」を契約書に先に書いておくことだけを押さえてください。差し引きの方法が事後に決まる契約は、利用者や相続人からは費用の使い道が見えにくくなり、争いの原因になります。
書き方の例(一般的な例) 連帯保証と求償の書き方
保証の引受け
理由「身元保証人となります」だけでは、保証なのか、緊急連絡先なのか、引取りなのかが分からない。保証をするなら、どの契約のどの債務かを特定する。
求償
理由求償の範囲と通知の時期を決めておくと、利用者や家族が後から内容を確かめられる。
預託金からの充当
理由預託金のどの区分から差し引くのかを決めないと、死後事務のために預かった分が先に減ってしまう。
保証の範囲と上限:個人が保証人になるときは極度額が必要
入院費や施設の利用料の保証は、一回の入院に限って保証する形もあれば、「今後生じる入院・入所の費用すべて」を保証する形もあります。後者のように、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約を「根保証」といい、保証人が法人でないものは「個人根保証契約」と呼ばれます。個人根保証契約は、極度額(保証人が負う上限額)を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。極度額の定めも書面でしなければなりません(同条3項が446条2項・3項を準用)。
事業者が株式会社や一般社団法人などの法人であれば、465条の2は「保証人が法人でないもの」を対象とするため、事業者自身の根保証には直接は当たりません。一方で、事業者が個人事業主である場合や、事業者が職員個人や親族などの個人を保証人に立てる場合には、極度額が必要になります。個人根保証契約では、主たる債務者または保証人が死亡したときに、主たる債務の元本が確定する、という規定もあります(465条の4第1項3号)。利用者が亡くなった時点で、保証の対象となる債務が確定するという意味です。
保証人が個人の場合と法人の場合の違い
| 場面 | 極度額 | 契約書で確認すること |
|---|---|---|
| 事業者が法人で、自ら保証をする | 民法465条の2の極度額の定めの対象外(条文は「保証人が法人でないもの」) | 保証する債務の特定、期間、事業者の財務への影響。上限を置くかは契約設計の問題として決める |
| 事業者が個人事業主で、自ら保証をする | 個人根保証契約にあたり得る。極度額を書面で定めなければ効力を生じない | 極度額の金額、書面または電磁的記録での定め、利用者の死亡で元本が確定する点の説明 |
| 事業者が、職員や親族など個人の保証人を立てる | 個人根保証契約にあたり得る | 極度額、保証人への説明、保証人が個人であることの確認 |
極度額を置くかどうか以前に、そもそも保証の対象を絞ることを考えます。入院・入所の契約ごとに保証の対象を特定する書き方なら、保証が及ぶ範囲が見えやすくなります。一方で、期間内のすべての入院・入所を保証するという書き方は、事業者にとって負担が読みにくくなります。保証を引き受けた事業者が、利用者の支払能力を超える保証を重ねていないか、という観点でも、範囲を確認しておく必要があります。
入院・入所の手続支援と身柄の引取り:医療機関・施設に確認し、できることを伝える
国のガイドラインは、入院や入所のとき、利用者が自分で手続できるなら本人が行うのが原則としたうえで、手続の支援を契約書に明記している場合には、利用者の意思を十分踏まえて、事業者が支援できるとしています。入院では、入院手続に関する説明への立会いや、費用の支払の代行などが例に挙げられています。介護施設等への入居・入所では、面談の日程の調整、重要事項説明のときの立会い、必要書類の作成・発送・提出の支援、入所費用の支払などが例です。
契約に基づいて入院や入所のときに身元保証等サービスを行う場合は、医療機関や施設に、どの対応が必要かを確認し、事業者として対応できるものと、できないものを伝えることが重要とされています。連帯保証、手続の支援、緊急連絡への対応、身柄の引取りなどが、確認する対応の例です。利用者に必要でも事業者が対応できない事項については、医療機関や関係機関とも相談して、代替サービスの手配などを調整することが望ましいとされています。
入院・入所のときの確認の順序(軽い確認から重い確認へ)
- 利用者の希望を聞く手続の代行、説明の場への同席、保証など、利用者が何を望むかを先に確認する。事業者が提供できる内容を押しつけない。
- 関係者への情報共有の了解を得るかかりつけ医、担当のケアマネジャーなど、すでに医療や介護を利用している場合に、関係機関と連絡・情報共有することについて、利用者の了解を得ておく。
- 医療機関・施設に必要な対応を確認する病院や施設が、連帯保証、手続支援、緊急連絡、引取りなどのうち何を求めているのかを聞く。
- 対応できること・できないことを伝える契約に基づく対応の可否を、医療機関・施設に伝える。口頭だけでなく、書面や記録に残す。
- できない事項の代替を調整する事業者が対応できないが利用者に必要な事項は、医療機関・関係機関と相談し、代替サービスの手配を調整する。
最初の二段は契約前(重要事項説明のとき)に、後の三段は入院・入所が現実になったときに行う想定です。
身柄の引取りは、二つの場面で意味が変わります。亡くなったときの遺体の引取りは、死後事務の一部で、死後事務委任契約の書き方で範囲と費用を決め、実際の手続は死後事務の履行の実務で扱います。生前の契約に「身柄の引取り」とだけ書くと、本人が退去するときの引取りなのか、亡くなった後の引取りなのかが読み分けられません。退去時の引取りは、行き先の確保や移動の手段まで含めるのかを、契約書に具体的に書きます。
「保証人がいないから入れない」と言われたときの説明と、勧誘で避けるべき言い方
身元保証のサービスは、「保証人がいないと入院できない」「施設に入れない」という不安に応える形で勧誘されることが少なくありません。しかし、国の資料では、医療機関・介護保険施設等は、正当な理由なくサービス提供を拒否できず、入院・入所の際に身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当とされています(国のガイドライン表1の注。根拠として、平成30年4月27日厚生労働省医政局医事課長通知「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」が掲げられています)。医師法19条1項も、診療に従事する医師は、診察治療の求めがあったときは、正当な事由がなければ、これを拒んではならないと定めています。
この前提を踏まえると、「保証人がいなければ入院できません」と断定する説明は、事実と異なる可能性があります。消費者契約法4条1項1号は、重要事項について事実と異なることを告げられ、それによって誤認して契約の申込みをしたときは、消費者がその意思表示を取り消せると定めています。また、同法4条3項7号は、加齢又は心身の故障により判断力が著しく低下していることから、生計、健康などについて現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、正当な理由がないのに、契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難となる旨を告げることを、取消しの対象としています。国のガイドラインも、契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難となる旨など、消費者の不安をあおる説明を避け、誠実な説明をするよう求めています。
書き方の例(一般的な例) 勧誘・説明の言い方
保証人が必要かどうか
理由医療機関等が身元保証人がいないことのみを理由に入院・入所を拒むのは不適当とされる。断定すると事実と異なる説明になり得る。
契約の必要性
理由生活維持への不安をあおる告知は取消しの対象になり得る(消費者契約法4条3項7号)。
すぐ決めさせる
理由本人の意思に基づく契約にするため、検討の時間と相談の機会を与える。契約書は交付する。
ここで、公的な窓口や制度への案内も説明に含めるのが適切です。厚生労働省の「身寄りがない人」向けのガイドラインは、医療機関に対して、身寄りがない人の支援として、成年後見制度や日常生活自立支援事業などの権利擁護の制度の利用相談、地域包括支援センターなどへの相談、行政サービスへの相談を挙げています。事業者が契約を勧める際にも、これらの選択肢があることを知らせず、自社の契約しかないように説明することは避けるべきです。
契約書と重要事項説明書への書き方:六つを分けて置く
ここまでの内容を、契約書と重要事項説明書にどう置くか。次は、国のガイドラインと条文の考え方に沿った、一般的な書き方の一例です。
書き方の例身元保証等サービスの範囲(入院・入所)
- 当社が本契約に基づき提供する身元保証等サービスは、次の各号のうち、利用者が申込書で選択したものに限ります。(1)連帯保証 (2)入院・入所に係る手続の支援 (3)緊急連絡先の受託及び緊急時の対応 (4)身柄の引取り(退去時に限る)
- 当社は、利用者の医療行為に対する同意を行いません。ただし、利用者が事前に書面で示した意向を、利用者の意思が確認できる場合に確認のうえ、医師等に提示すること、利用者が希望する場合に医師等の説明の場に同席することはできます。
- 当社は、第1項の連帯保証をするときは、利用者が○○との間で締結する入院・入所に関する契約に基づく入院費及び利用料の債務に限り、書面(電磁的記録を含みます。)により行います。極度額が必要となる場合は、書面で定めます。
- 当社が前項の連帯保証に基づき支払をしたときは、支払った金額、相手方及び内容を、支払後○日以内に利用者に通知します。当社は、利用者の同意に基づき、預託金のうち第○条に定める区分から差し引くことができます。
- 医療機関または施設が、第1項各号以外の対応を求めたときは、当社は、対応の可否を利用者及び当該医療機関等に伝え、対応できない事項について、利用者の意向を確認のうえ、代替の方法の調整に努めます。
金額や日数は「○」で伏せています。実際には、サービスの内容に合わせて、重要事項説明書の費用の欄と同じ区分に揃えます。
確認の問いと理由契約書と説明書を作る前の確認の問い
六つのうち、どれを引き受けるのか。
申込書で項目ごとに選べる形にすると、引き受けない項目が自然に外れ、利用者の誤解を減らせる。
連帯保証をするなら、どの債務の、どの期間の保証か。
「入院・入所に関する一切」のような書き方は、範囲が読めない。契約ごとに特定すると、上限や求償の説明がしやすくなる。
保証人が個人の場合の極度額を書面で定めたか。
個人根保証契約は、極度額の定めがなければ効力を生じない(民法465条の2第2項)。
事業者が払った後の求償と、預託金のどの区分から差し引くのかを決めたか。
差し引きの順序と明細は、利用者と相続人に見える形にしておく。
医療機関・施設に、対応できること・できないことを伝える手順があるか。
国のガイドラインは、必要な対応を確認して可否を伝えることを重要とする。
「保証人がいなければ入れない」という断定の説明が、勧誘の台本に入っていないか。
事実と異なる告知や不安をあおる告知は取消しの対象になり得る(消費者契約法4条1項1号・3項7号)。
起きがちなこと
場面別・起きがちなこと
- 契約書には「身元保証人となる」とだけあり、連帯保証なのか、緊急連絡先なのかが分からない。病院から保証人としての請求書が届いて初めて、事業者と利用者の認識がずれていたと分かる。
- 事業者が立て替えた入院費を預託金から差し引いたが、明細がなく、利用者の家族が後から内訳を求めても出てこない。
- 保証人が個人(職員や親族)であるのに極度額が書かれておらず、保証の効力そのものに疑義が生じる。
- 「身柄の引取り」の語が、退去時の引取りと死亡時の引取りのどちらを指すのか書かれておらず、亡くなった後に、事業者が引取りの費用を負担するのかをめぐって争いになる。
- 病院が求める対応(保証、手術の同意、遺体の引取り)のうち、事業者が引き受けないものを伝えておらず、緊急時に「頼んだのに」と言われる。
- 「保証人がいないと入れない」と説明して契約を取ったが、実際には保証人なしで入院できる病院で、利用者が後から取消しや返金を求める。
- 雇用の身元保証の感覚で「三年で切れる」と考えて契約書を作り、実際の保証の期間や範囲の設計がないまま運用してしまう。
よくあるご質問
身元保証サービスと、雇用の身元保証は同じですか。
別のものです。「身元保証ニ関スル法律」は、被用者の行為で使用者が受けた損害を賠償する雇用の身元保証を対象にしています(1条)。高齢者の入院・入所の身元保証は、医療機関で慣習的に使われている呼び方で、国の資料もこの区別を断っています。契約の内容は、民法の保証や委任、消費者契約法の規定に沿って考えます。
連帯保証と緊急連絡先は、何が違いますか。
連帯保証は、利用者が入院費などを払わないときに、保証人がその履行をする責任を負う契約で、書面でしなければ効力を生じません(民法446条)。緊急連絡先は、緊急時に病院などが連絡をとる窓口になることで、金銭の責任を負うことではありません。どちらを引き受けるのかを、契約書で分けて書く必要があります。
事業者が病院に立て替えて払ったお金は、どう取り戻すのですか。
委託を受けた保証人には、支出した財産の額の求償権があります(民法459条)。実際の取り戻しは、契約書に、通知の方法、預託金のどの区分から差し引くか、不足したときの追加預託などを定めておくのが国のガイドラインの考え方です。差し引くときは、金額と内容の明細を利用者に示します。
保証人が個人の場合に、上限は必要ですか。
一定の範囲に属する不特定の債務を保証する個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。極度額の定めも書面でする必要があります。保証人が法人の場合は、この規定の対象外です。保証人が個人か法人かを先に確認します。
「保証人がいないと入院できない」と言われたら、契約するしかないのでしょうか。
国の資料では、医療機関が身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒むのは不適当とされています。医師法19条1項も、正当な事由がなければ診察治療の求めを拒んではならないと定めています。不安をあおる勧誘は、消費者契約法で取消しの対象になり得ます(4条3項7号など)。病院が何を求めているかを確認し、公的な窓口にも相談したうえで、契約を決めるのが安全です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの内容や契約の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務の経験をもとに、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」は法律ではなく、事業者が自主的に確かめるための指針として示されたものです。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会